上五島航路  2000年8月10日

青く晴れ渡った夏空の下、フェリーつばきは佐世保港を出港、一路上五島は有川港を目指して航海中だ。

佐世保の周辺は九十九島と呼ばれる島の多い海域。小さな島、大きな島、人の住んでいる島、松の木一本の単なる岩礁みたいな島、それに陸続きの半島でもほとんど島と変わらないくらい道路が細くくねくねとそして遠回りの集落・・・。最近は橋がかかっているところもあるがそれでも小さな入り江に面した小さな集落はその前の小さな桟橋からでるふねに頼って他の島とつながり、佐世保の町とつながって生活をしている。ここではいろんな小さな船たちがイキイキと活躍している。 

そんな島々の間を抜けてフェリーつばきは外海に出て遠くにかすむ五島列島をめざしてスピードを上げた。天気はいいが台風の余波かうねりは大きく全長約80mのフリーつばきも大きく左右にゆれる。九十九島を抜けてもけっこういろんな島々がみえる。

この青い海と空、快適な風、順風が吹いて、その海風に心地よい思いをしているとふと、そう数百年も昔は、この海は海賊や水軍、それに貿易船の行き交っていた要衝の海域であったことがおもいうかんできた。この順風に帆を膨らませて、海のつわものどもを乗せた帆船が行き来していた。いちおう松浦党が管理してはいたのだが垣根も仕切りもない自由に行き来できる海、野心、冒険心、領土や略奪、名誉や傷心いろんなものを載せて、文明あふれる諸外国を目指し、異国で一旗あげようと、新たな領土を目指し虎視眈々と、自分の領海をあらす海賊どもを掃討すべく、また故郷への思いを載せて、いろんな船が風を頼りにあるときはその長い魯をこいで行き来していた。 

追いついてそばにならんだ貨物船がふっと大きな帆に風をいっぱいに受け遠いアユタヤをめざす貿易船にかわって、その船尾楼には真っ黒に日焼けしたひげの大男が前方をきっと見据えおおきな舵柄をにぎっていた。ふっとこちらをみた男がにやっと笑って太い右手をふりあげた・・・・・おうっ! 最初の寄港地は其隆であろうか、きをつけてゆけよ! おもわず手を振ろうとしたらスピードの遅い貨物船が後方に離れて行きつつあった。 

そうか、あのころはもちろんビニール袋なんか流れてなかっただろうし海の香りはもっともっとつよかったのだろうか。 フェリーつばきはちょうど佐世保と上五島の中間あたりにさしかかり、海の色もいっそう深いブルーにかわり、太陽のひかりに輝いていた。

あと1時間あまりで上五島、有川につく。

 

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