船が概略出来上がると晴れの進水式を迎える。
ごく小型の船では完成して進水式、そのままエンジンをかけて走り出す。
でも19GT程度以上の船では完成前に水面に浮いた状態でないと
できない作業、たとえばプロペラシャフトの芯だしやポンプや配管の調整等が
あり多少未完成の状態で進水式を行う。
進水式の朝、関係者はなにかうきうき、わくわくして準備をすすめる。
しかし設計担当者はそうはいかない。
計画どうりの喫水で浮くか...左右に傾いたり、極端なトリムにならないか。
何より、計画より沈みすぎると船が重いということになり速力に重大な影響を
及ぼすし乾舷やいろんな問題も起こる。
重量とバランスは図面をもとにいかに正確に計算しても、やはり実際に建造する船とは違いが出てくるのでそこを長年の経験をもとに修正係数とかを加味しておくのである。
それでも、実際進水の直前はかなりの経験をつんでもどきどきものなのである。
それが、初めてまかされて基本設計をした船であると、もう不安で一杯になる。
「大丈夫だから、」といってる笑顔がひきつっている。
神事が終わり、もちもまいて命名式もすみ、いざ支綱切断という段になると
もう緊張は
はちきれんばかりになってみんなの前にはいたたまれずに、
柱のかげかどこかから進水してゆく船をみおくることになる。
船が初めて水に浮くとき、いきおいで一瞬ずんと沈み込む。ドキンとする。
それからふぅっと浮いてきておちつく。「は〜!」
さて船が進水して、たいていは関係者一同「おめでとうございます!」「いや〜、いい浮きですねえ!」とお互いを、船をたたえる。
とりあえず、みなさん喜んでくれてこの場はめでたしめでたし・・・といいたいところだけど。
だが、まてよ。今の状態はまだ未完成で軽いんだから見ため喫水線よりかなり浮いててあたりまえなんだ。あとあれとこれとであと**トンくらい重くなるから、そのときの喫水はもう20cmははいる。 うん、それでびったしだ。
「・・・・・よかった、は〜。」
ってことで、やっと安心してほんとうの笑顔になる。
「あっ・・・どうも おめでとうございます!!」
昔の、頼りは電卓だけの手計算の時代から、今のようにパソコンであっというまにいろんな計算ができて、パソコンで図面を描く時代になっても、そしていくら経験を積んでも、
やっぱり 進水の日は緊張ものだよ! |