夕 日


どこまでもつづく砂浜、 西の海に夕日が沈もうとしている。 
海面に触れるとジュッと大きな音を立てそうなくらい 
真っ赤に焼けた太陽が海に沈もうとしている。



 「...かれ、かえってくるんだね.....。」 

 「...ねえ、二人の人を好きになるっていけないこと?」

 「....」 

 「あなたとおなじくらいのとしに生まれたかった。私が生まれた
ときには、もうあなたには好きな人がいたなんて....。」

 「...もし、同じくらいの年に生まれてもたぶん、きみはまず
かれとであったとおもうよ。」

 「そうね、...やっぱりかれのことはほんとうにたいせつなの。」



すでに太陽は水面下に沈み残光が空を赤紫に染めていた。 

車に戻りながら山のほうの空を見ると、気のはやい星たちが
白い光でまたたいていた。

 「ねえ、わたしががんばっておかあさんになったら仕事とかで
またきてくれるでしょ?」
「うん、もちろん。」
 「そしたらね、かれのいないとき子供にそっとおかあさんね、
このひとが好きだったんだよっていうの。」 
 「ははは、そしたら子供がおとーさん、おかあさんこのひとが
すきだったんだって!って大きな声で言うよ、まったくもう。」 
 「そうだよね、はは...。」 

わらいながら彼女のひとみがきらりとひかった。


 

 


Shortへもどる